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高松高等裁判所 昭和46年(ラ)29号 決定 1971年8月17日

抗告人

大豊運送有限会社

代理人

隅田誠一

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙に記載の通りである。

よつて判断する。

記録によれば、本件債権仮差押申請事件の債務者である山中清広、同鍵山正、同梶原進の三名が現に抗告人会社に勤務していることが一応認められるところ、抗告人主張の如く、右債務者等三名がいずれも若年のアパート住いでみるべき資産もなく、そのうち山中、梶の両名はまだ独身であるとしても、このことから直ちに抗告人会社を退職して他に職を求め、その行方をくらます可能性があるとは推認し難く、他に右債務者三名が近き将来抗告会社を退職し、かつ、その行方をくらます虞があるとの事実を一応認め得る疎明資料はない。してみれば、本件債権仮差押の必要性については、その疎明がないといわざるを得ない。

又記録によれば、本件被仮差押債権はいずれも債務者等三名の日常の生活を維持するために必要不可欠のものであることが一応認められるのであつて、かかる被差押債権の性質から考えて、保証を立てさせることをもつて、本件仮差押の必要性の疎明にかえることは相当でない。

そうだとすれば、本件債権仮差押の申請は理由がないから、これを却下した原決定は相当であつて本件抗告は理由がない。

よつて本件抗告を棄却し、抗告費用につき民訴法第八九条を適用して主文の通り決定する。

(合田得太郎 谷本益繁 後藤勇)

抗告の趣旨

原決定を取り消す。

別紙記載の内容の仮差押決定を求める。

抗告の理由

一 裁判所は、抗告人の仮差押申請につき、被保全権利の存在は認められるけれども、保全の必要性がない、として棄却した。然しながら抗告人の申請は法律上の理由からも又、証拠の点からも理由があるから、原決定を取り消して、別紙記載のような仮差押命令を求める。

二 尚、抗告人は保全の必要性につき、念のため次のように主張する。

1 相手方(債務者)三名はいずれも若年のアパート住いで、みるべき資産もなく、そのうち、山中、梶原の両名は未だ独身でもある。

2 相手方らの本件共同不法行為によつて蒙つた抗告人の損害は、金四五万円を越えるものであり、他方相手方三名の平均賃金の合計額は、月金一五万五〇二三円であるから、三名の給料を同時に差押えたとしても、月金三万八七五五円にすぎず、これが完済されるためには、一ヶ年の期間を要するわけである。而してこの間、相手方ら抗告人会社に継続して勤務してくれればその執行は可能であり、又必ずしも困難ではないが、原審決定理由にも説示するとおり、本案訴訟において相手方らが敗訴又は、その恐れが明確となり、或いは敗訴判決により、給料が差押えられた場合には、若年、身軽で運転技術もある相手方らが抗告人会社を退社して、他に職を求め、行方をくらます可能性は頗る大きいものというべく、かくては勝訴判決の執行が不能若しくは著しく困難となることは明らかである。

三、原審は本件仮差押の保全の必要性については疎明もなく、又疎明に代る保証を立てしめてこれを許すことは相当でない旨判断しているが、前記一、二主張の事実は追加疎明書類からも明らかであるし、又、右主張事実が仮差押の必要を基礎付けるに足るものであることはいうまでもないから、仮りにこの点に関する疎明が充分でないとしても、疎明に代る保証を立てしめて、仮差押決定を許容すべき事案であると考える。

請求債権目録

一金三〇万円也

但し、債務者ら三名が、共謀して昭和四六年四月一四日午後一〇時頃から、同月一九日午後六時頃までの間、債権者保有の営業用トラック一二台を、車庫入口にバリケードを設けて不法に占拠し、かつ、そのキイを抜き取り、或いはタイヤや、エアドレーンコックを外す等して、その運行を不可能ならしめたことにより、債権者が蒙つた損害(逸失利益)金の内金。

差押債権目録

一各金三〇万円也

但し、債務者らが、第三債務者から毎月支払いを受ける給料基本給、時間外手当、生産手当、無事故手当、通勤手当及び夏期、冬期の賞与並びに退職金から所得税、地方税を控除した残額の四分の一宛、昭和四六年五月分より各請求債権額に満つるまでの額。

申請の趣旨

債権者から債務者らに対する請求債権目録記載の債権の執行を保全するため、債務者らから第三債務者に対する差押債権目録記載の債権は仮に差押える。

第三債務者は、債務者らに対して、前記差押債権の支払いをしてはならない。

旨の裁判を求める。

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